
一冊のドイツの古い植物図譜を手に取りました。
落ち着いた青緑色の装丁に、植物を思わせる控えめな装飾。
ページを開く前から、この本が歩んできた時間を想像したくなります。
そしてページをめくりながら、以前耳にした言葉を思い出しました。
アンティークの紙ものを見ていると、
「フランスらしい」「ドイツらしい」「イギリスらしい」という表現を耳にすることがあります。
また、一般的には、フランスは「美しいものをより美しく表現する文化」、
ドイツは「機能性や合理性を重んじる文化」、イギリスは「実用性やコレクション文化が育まれた国」
と紹介されることもあります。
もちろん、ひとつの国をそんな一言で表せるものではありませんし、
時代によっても、美しさのかたちは少しずつ変わっていきます。
それでも、そのことを頭の片隅に置きながら手元の紙ものを並べてみると、
それぞれ違った魅力が見えてくるように思いました。

ドイツの植物図譜を眺めていると、
植物そのものを丁寧に観察し、その姿を残そうとしているような印象を受けます。

葉や花だけでなく、細かな構造まで一緒に描かれているページを見ていると、「植物を知るための一冊」だったことが自然と伝わってきます。

一方、フランスの花のポストカードやクロモスカードを眺めていると、
「美しいものをより美しく」という言葉がふと重なります。
もちろん、植物図譜とポストカードでは役割が異なるため、単純に比べることはできません。
それでも、花束に仕立てられ、リボンが添えられた一枚を見ていると、
植物を伝えることとはまた違う美しさが大切にされていたのかもしれない、と思うのです。

イギリスの蝶のシガレットカードには、小さな紙の中に蝶の特徴が丁寧にまとめられています。
一枚ずつ眺めても楽しいのですが、何枚も並べてみると、思わず集めたくなる魅力があります。
もちろん、数枚の紙ものだけで国ごとの美意識を語ることはできません。
それでも、その紙ものがどんな時代に、どんな目的でつくられたのか。
その国ではどんな美しさが大切にされていたのか。
そんなことを思い浮かべながら眺めていると、一枚の紙との距離が少し縮まるような気がします。
アンティークの紙ものは、ただ古いものではなく、その時代の美意識にそっと触れさせてくれます。

私にとって、そんな時間は、オートクチュール刺繍の制作やデザインの土台を少しずつ育ててくれます。
これからの制作にも、そうした視点を少しずつ生かしていけたらと思っています。
植物を眺める時間
アンティークの植物図譜だけでなく、現在出版されている植物図鑑やボタニカルアートの本も、制作のヒントになる一冊がたくさんあります。
私自身も、植物の形や葉脈、花のつくりを眺めながら、刺繍の図案や色合わせの参考にしています。
気になる方は、ぜひ手に取ってみてください。
▼植物図譜を楽しむ時間に
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