オートクチュール刺繍では、本来「メティエ」と呼ばれる木枠に布をテープでしっかり張って作業します。布地がピンと張れていることは、作品の出来栄えや作業性に大きく影響する、とても大切なポイントです。
ただ、このメティエ——布を張る手順も、置いておくスペースも、そして重さも、慣れないうちはなかなかのハードル。私自身、教室で習った後「張り方を忘れそうで外せないまま保管していた」という時期がありました。それくらい、最初は気合いのいる道具です。
一方で、小さな面積の刺繍やアクセサリー制作なら、丸枠（刺繍枠）でも十分きれいに刺繍できます。
ただしポイントは “布をしっかり固定できる準備をしておくこと”。
そのひとつが、刺繍枠の内側にテープを巻く 方法です。
この記事では、
「刺繍枠にテープを巻くと、何が変わるのか？」
という疑問に答えながら、布地の保護や弛み防止に役立つ巻き方を、初心者の方にもわかりやすく紹介します。
◆なぜ刺繍枠にテープを巻くの？
1. 布を傷めず、きれいな状態を保てる
刺繍枠の木肌は一見なめらかでも、布を強く張ると摩擦が生まれます。特にオートクチュール刺繍でよく使われるシルクオーガンジーなどの生地はとても繊細で、張り具合が作品の印象を大きく左右する素材。
長時間作業を続けると、
・布目が荒れてきた
・枠の跡がついてしまった
などのダメージが出ることも。
テープを一枚挟んでおくだけで、この摩擦をやわらげ、生地への負担をぐっと軽減できます。
2. 布の弛みを防ぎ、刺しやすさが安定する
刺繍枠にテープを巻くことで、枠の内側に“ほんの少しの摩擦”が生まれます。
この摩擦が布をしっかりキャッチし、作業中に布がずり下がったり、少しずつ緩んだりするのを防いでくれます。
特にビーズ刺繍やリュネビル刺繍など、布の張り具合が作品の仕上がりに直結する技法では、枠が滑りにくいだけで作業の安定感が格段に上がります。
◆ テープを巻く前に準備するもの
・テープ（コットンテープ／杉綾テープなど）
布に触れる部分なので、やわらかく安定したコットン素材がおすすめです。
薄手の２cm幅程度のものを用意しましょう。
杉綾（ヘリンボーン）テープ は、
- 織りがしっかりしていて伸びにくい
- ヨレにくく、均一に巻ける
- 適度な摩擦が生まれ、布の固定力が上がる
といった理由で、刺繍枠との相性がとても良く扱いやすい素材です。
あまり幅が細いと巻く回数が増えてズレやすくなるため、2cm程度がおすすめです。
なお、綾テープ や バイアステープ などでも代用可能です。
気に入った柄の布で巻いても気分が上がりますね。
長さは、12.5cmの刺繍枠で約60cm。15.5cmの刺繍枠で約80cm使用しました。
巻き方やテンションのかけ具合など個人差がある為、多めに用意すルことをおすすめします。
・刺繍枠（丸枠）
使いたい大きさのもの
・マスキングテープ
巻き始めと巻き終わりを仮どめするために使用。
・針と糸／はさみ
テープの端を縫い留めたり、カットしたりするために使います。・テープ（コットンテープ／杉綾テープなど）
◆ 刺繍枠へのテープの巻き方（基本の手順）
1. 巻き始めを固定する
刺繍枠の内側にテープを45度くらいの角度であて、マスキングテープで軽く固定します。
マスキングテープの代わりにクリップで留めたり、何も留めずに手で押さえながら巻くことは可能です。
隠れるところなので気にせず貼っていますがお好みでOKです。
2. テープを巻いていく
枠のカーブに合わせて、テープが重ならないようにゆっくりテープを巻き進めます。
ゆるく巻くと後でズレやすいので、テンションをかけながら巻くのが一番のポイント。
３. 巻き始めと巻き終わりを縫い留める
１周巻いたら、テープの端を中に折り込み、針と糸で縫い留める。
糸はなんでもOKですが、目立たない色を使うと仕上がりがきれいです。
◆ 巻き終わったらどう使う？
テープを巻いた刺繍枠は、
- 生地がしっかり固定できる
- 作業中に布が緩みにくい
とメリットが大きく、特にアクセサリーや小さなモチーフ作りに最適です。
また、布を貼る際は最後にヤットコ（できればラバー付き）でネジをしっかり閉めると生地のずれをしっかり抑えてくれます。
◆ まとめ
刺繍枠にテープを巻くのは少し手間に感じますが、
「布を傷めない」「弛みにくい」というメリットが大きく、その後の作業に大きく影響します。
繊細な刺繍やビーズ刺繍をする方にはとても役立つひと手間です。
今回使った道具
薄手のコットン杉綾テープ
１mから購入可
