はじめに|オートクチュール刺繍に使う生地について
オートクチュール刺繍では、技法や素材だけでなく、どんな生地を土台に選ぶかによって、仕上がりの印象や制作中の感覚が大きく変わります。
このコラムでは、私自身が実際に制作で使っている生地を軸にしながら、オートクチュール刺繍に用いられる生地の違いや、その特徴についてまとめてみたいと思います。
素材をどう捉え、どう向き合っているか。その一例として読んでもらえたら嬉しいです。
そもそもオーガンジーとは?

オーガンジーは、強撚糸を(強くよりをかけた糸)を使った薄地の平織ものです。折り目が荒く、とても軽くて透け感が強いのが特徴です。針感が強く、シャリッとした肌触り。表面には光沢があります。
透け感があるので、手元が見えること、張りがあるのでクロッシェが刺しやすいという特徴がオートクチュール刺繍にマッチしていますね。素材は、綿・シルク・ナイロン・ポリエステルとさまざまなものがありますが、次に私が使っている生地を紹介します。
私が主に使っている生地|シルクオーガンジー
私のオートクチュール刺繍の制作では、土台布としてシルクオーガンジーを使うことが多いです。
理由のひとつは、刺しやすさです。シルクの強さは、針が素直に入り、クロッシェ・ド・リュネビルでチェーンステッチを重ねていく際も、生地の反応が安定しています。ビーズやスパンコールを留めるときも、力加減が読みやすく、作業に集中しやすいと感じています。
仕上がりの見た目にも、シルクならではの良さを感じています。光の反射がやわらかく、ビーズやスパンコールを留めたときの表情にも、上品さや高級感が残ります。
素材②|ポリエステルオーガンジーとの違い
同じオーガンジーでも、ポリエステル素材のものも広く使われています。
コスト面ではシルクオーガンジーと比べて非常に手に取りやすい素材です。そのため、生地が表に出る部分の少ない作品や、技法を確認するための制作など、目的に応じて使い分けることもできます。
平織コットン・リネンという選択|オーガンジー以外の生地
平織のコットンやリネンは、オーガンジーとは性質が大きく異なります。透け感がなく、裏側の様子が見えないため、刺繍の難易度は上がります。
一方で、生地そのものが持つ表情や空気感を活かしたい作品には、とても相性が良い素材です。刺繍が前に出すぎず、生地と一体になったような仕上がりになる点は、オーガンジーにはない魅力だと感じています。他にも、オーガンジーでは難しい織糸を生かした表現などができます。

生地の違いを整理すると
シルクオーガンジーは、技法との相性が良く、刺しやすさと仕上がりの上品さを兼ね備えた素材です。
ポリエステルオーガンジーは、均一性と安定感があり、表現によってはシャープな印象を生かすことができます。
平織のコットン・リネンは、刺繍の難易度は高くなるものの、生地そのものの質感を大切にしたい場合に力を発揮します。
おわりに
どの生地が優れている、という話ではなく、どんな表現をしたいのか、どんな感覚で刺繍と向き合いたいのかによって、選ぶ生地は変わってくると思います。
FILCOTEでは、技法や素材の背景を大切にしながら、作品ごとにふさわしい土台を選んで制作しています。このコラムが、生地について考えるひとつのきっかけになれば幸いです。
参考文献
『パターンに合うテキスタイルが選べる服地事典』

